私とあなたのMemory
この沈黙を先に破ったのはリョウの方だった。
「昨日は、失礼なことを言っちゃってスイマセン。」
と、いきなり頭を下げた。
「え!?失礼なこと!?」
「『誰?』とか言っちゃったから・・・」
そんなこと気にしてくれてたんだ。
やっぱ、やさしいな。
記憶がある頃と変わんない。
あの優しさは、リョウの素なんだな。
「コレ、お見舞いです。」
そう言って、みかんの入った袋を渡す。
「ありがとう。」
リョウがそれを受け取ると、
私は『それじゃぁ』っとドアの方に歩いて行った。
これ以上ここ(病室)にいると、
また泣きだしてしまいそうだから。
ドアをあけて、外に出ようとした瞬間・・・・
後ろから呼び止められた。
「あの、名前聞いてもいい?」
私は、ドアの前で立ち止まり、振り返った。
「だめ?」
そこには、ニコっとほほ笑むリョウの顔。
「なんで・・・?」
「理由は、ないよ」
そう答える。
「今井 ののかです。」
こんなの、初めて会った人達がする会話だ。
「中谷 リョウです。あ、知ってるか。」
「うん。」
以前のリョウとは、接し方が全然違う。
当然か。
「今井さんは、前のオレを知ってるんだよね?」