私とあなたのMemory
放課後。


「ののか、ゴメン今日委員会だから先に帰ってて。」


教室を出ていく奈々。


「はいよー。」

彼女の後ろ姿を見ながら答える。


じゃ、今日は1人で帰るか。


昇降口。

げた箱の靴をとって履き替えた時、

「よっ!」

後ろから声をかけられた。

もう、分かるこの声。


「バイバイ。」


私は、それだけ言って歩き始めた。


「ちょ、待てよ。」


後から、せかせかと追いかけてくる男。

「何?なんか、用でもあんの!?」


うざいうざい。

「いや、あるっちゃあるけど。」


曖昧だなぁ。

もう、おわかりの通りこの声の主は黒木。


「何?」

ちょいキツく言いすぎたから、
今度は優しく聞いてみる。


「え?ここで言うのかよ。」


ここじゃなかったらどこで言うの?


「ここじゃマズイ?」


「うん。ちょっとマズイかな。」


「じゃぁ、どこがいいの?」


「来て。」


そう言って、彼は私の腕を掴んで歩きだした。

(来て。)


なんだか、リョウを思いだす。

あの日もそうだった。

リョウに連れて行かれるまま。

でも、そのあとにリョウは・・・・。


あぁ、もう考えるのはやめよう。


手・・・。

掴まれてる。


なんでか、恥ずかしがる。

コイツ相手に?

まだ、だれもいなかった校庭の真ん中をズンズン歩く黒木。


私は何も言えず、ただ手を引かれるまま歩いた。


門を出て、左へ曲がり
小さいレストランが見えた。

そこを右へ。


左へ。


くねくね曲がった道を歩き続ける。

どこに連れて行く気?






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