私とあなたのMemory
黒木が止まったのは歩き始めてから15分後。


男の歩幅って広い。


同じ歩数でも、置いて行かれる。

この場合、手をつないでいたから大丈夫だったが。


って、別につないでた訳じゃないか。

というより、「掴まれてた」?


それは置いといて・・・。



ずっと下を向いて歩いてたが、やっと顔をあげることが出来た。


その私の目に飛び込んできたのは大きな絵。


小さなビルの裏に描かれた、大きな絵。


ざっと高さ3メートルくらいだろうか。




その絵には、海が描かれていた。



暗く、深い海から
透き通る透明な海へ


見事なグラデーション。


ただ、海だけが描かれていた。


他にはなにもない。


ただ、青いだけの絵。


なんで海とわかったのか。


それは、絵の左下に「海」とタイトルがつけられていたから。


「凄い。」


「だろ?」

自慢気に言う。

「だろ?って・・これ黒木が描いたの!?」


「もっちろーん。」


笑顔で答える。

「へ~。」

海を描くんだ。

でも、上手い。


「俺、告白は海でって決めてるんだ。」

「そうなんだ。」

私は絵に釘付けで黒木の話も聞いていない。

「でも、ここって海ないだろ?」

「うん。」

「だから、自分で海作った。」

「へ~。」

「で、オレは今日告白する。だからお前を呼んだ。」


「へ~。誰に?」


「お前。」




・・・・ん?


なんか今引っかかったぞ?


「誰に告白するって?」


「だから・・・・。






お前に。」








< 72 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop