私とあなたのMemory
電話を切ってすぐ、玲の家のドアが開いた。

部屋に上がったが、玲はまだドアの前に突っ立ったままだった。


ボーっとしていて、
目は焦点が定まっていない。

あきらかに様子がおかしい。


「大丈夫か?具合悪い?」



「ううん。そうじゃない。」

なにか言いだげな玲の表情。

「『そうじゃない。』って他になんかあんの?」


オレには何もわからず、
ただ、不安気な玲の表情だけが気になっていた。


「ここ、座れば?」

俺は、ポンと床を叩いた。


玲はうなずき、オレの隣に座った。

そして、顔を伏せて言った。





「子供・・・できちゃったかも。」




は・・・?


「子供?」

「うん。」


玲は下を向いたまま答えた。



おいおい、マジかよ。


子供ができるなんて、思ってもいなかった。


付き合う前から玲を抱いたことは何度もあるが、
必ず、避妊はしていた。



子供を作る気なんてなかったし、
もちろんできてしまうなんて思ってもいなかった。



「なんで・・・?」


呆然とするしかできない。


すると、玲が泣きだしてしまった。


ボロボロと涙が玲の頬をつたう。


「大丈夫。まだ本当に子供が出来たとは決まってないだろ?」


「うん。」


「じゃぁ、心配するな。」

今は、玲を落ち着かせることが最優先だった。


本当は、


オレが一番落ち着きたかった。

< 80 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop