君が必要とする限り
今日の診察が取り敢えず終わり、俺は患者の診断書に目を通していた。
「川崎先生、お疲れさまです。」
声のほうに振り返ると、
そこにはベテラン看護師の
笹木さんが立っていた。
「お疲れさまです。」
「川崎先生、今日はちゃんとお帰りになってよく休んでくださいね。
達也くんが、先生疲れてるみたい。元気なかったよ。なんて言ってましたから。」
「達也くんが?」
達也くんは、俺が医師として現場に立ってから初めて診た患者だった。
付き合いが長い分、彼にはお見通しのようだ。
「川崎先生、お若いのに熱心だって親御さんからも信頼熱いようですよ。
またハンサムだから人気があるのね。
若い看護師なんてもう、狙ってるわよ、先生のこと。」
ふふふっと笑うと、
「じゃあお先に失礼します。」と身を翻した。
やれやれ、ベテラン看護師にはやっぱり慣れない。