君が必要とする限り
電車に乗って、約1時間。
足取りは決して軽くない。
むしろ、重くて重くて
立ち止まってしまいそう。
でも、私は行かなきゃいけない。必ず。恨みを、晴らすために。
「大野さん、今日はいつもと違うあちらの場所で待ってていただけますか?」
受付の看護師さんは、必要以上に優しく告げた。
この人だって、ほんとはこんなに感じ良くしたくないはずなのに。
…なんて人間の裏を常に考える私。
「わかりました。」
だから私も、微笑んだ。
必要以上に優しく。
案内されたのは、いつもの待ち合い室ではなく
少し隔離された、個室だった。
白い壁に、白い机。
開放的な大きな窓が、唯一病室とは思わせなかった。