君が必要とする限り
―コンコン。
ドアを叩く音。
ここのドアは案外厚いのか、
音は少し遠い。
「こんにちは。」
低くも高くもない、優しい声色。
姿を現したのは、見たことのない若い医者だった。
身長は、そんなに高くない。
でも細身で、着ている白衣が少し緩く見える。
白い肌に、黒い髪。
見上げた顔には
黒縁メガネをかけていて、
その奥に、少し眠たそうな
大きな二重の瞳があった。
すっとした鼻に、薄くてほんのり色付いた唇。
もう一度瞳を見ると、
驚いたように目を見開いていた。
…なんだろう。
私、どこかで会ってたかな?
「…あ、えっと、突然びっくりしましたよね。」
いや、びっくりしたのはあなたのほうじゃない?
「初めまして。ここの病院の小児科の医師をしている、川崎 隆太です。」