君が必要とする限り
そう言うと、川崎という若い医者は私の向かいにある椅子に座った。
―カワサキ…リュウタ…
カワサキ…川崎?
いや、川崎なんて苗字、病院に2人いてもおかしくないか。
それにしても、なんで小児科の先生が私のところにいるの?
「大野 亜矢子さんですよね?」
「…はい。」
名前までもう知ってるんだ。
「いつも、院長の診察を受けていたと思うんですが、今日から僕と並行して診察を行うことになったんです。」
「えっ…それはどういう…」
「安心してください。
僕はあくまでもカウンセリングのような形ですので、診察という堅いものではなくて…そうですね、軽く悩み相談とでも思って頂ければと思います。」
川崎先生は、目尻を下げて少し微笑むと手元の資料に目を落とした。
…この人、モテそう。
ふとそう感じた笑顔だった。
でも、なんでカウンセリングなんか受けなきゃいけないんだろう。
もしかして、バレたのかな。
心臓なんて全く悪く無いって。
…そりゃ、バレるか。
相手はプロだもんね。
でも、院長と関わりが薄くなるのはマズい。
非常に、マズい。