君が必要とする限り
「…先生は、青空が好きですか?」
まさか、こんな質問をされるとは思わなかった。
俺は咄嗟の出来事に言葉が出ず、ただ彼女の目を見つめることしか出来なかった。
「私は…どうも好きになれないんです。」
俺は、あの時なんて答えれば良かったんだろう。
「…じゃあ、今日は帰ります。
さよなら、川崎先生。」
彼女は、大野亜矢子はそう告げると、自らドアを開け
病室を去った。
ドアをぼーっと見つめたあと、
我に返り机へと向かった。
資料を手に取り、ふと目を上げる。
さっきまで彼女の座っていた椅子は、なぜか寂しげにたたずんている。
気のせいか…
気のせいだと、そう思っておこう。