君が必要とする限り
動悸が速まったのが、わかった。口が渇き、目が泳ぐ。
先生…気付いたかな?
恐る恐る見上げると、
先生が私を見ていた。
じっと私を見つめてる。
どうしよう、どうすればいい?
「隆太〜…早く行こうぜぇ〜」
「あ、うん。」
私が目をそらす前に、
川崎先生は視線を外し歩きだした。
「亜矢子?」
「あ、ごめん。なんか今日は気分が悪いみたい。…帰るね。」
「え、じゃあ送ってくよ。」
「…あり…がとう。」
アキラの車の中でも、
胸のモヤモヤは消えない。
むしろ増えるばかり。
家の前まで着いて、
下りようと手を掛けると
「亜矢子。」
肩を引かれ、
顎を持ち上げられる。
そして唇に落とされる、キス。
微かなアルコールの香り。
「…おやすみ。」
何も言えず、ただ頷いた。