君が必要とする限り
Ⅶ
信号が赤になったのを見計らい、電話に出る。
「もしもし。今悪いけど運転中なんだ。後でまたかける。」
『この時間に車って……お前、まさか…』
「また後で、かけるから。」
念を押す。
『…わかった。必ず、かけてこいよ?』
いつにない真剣な声に、
違和感を感じた。
話そうとしたとき、
信号が青に変わる。
「…じゃあ、後で。」
嫌な、嫌な予感がする。
家に着き、
残り香がする上着をハンガーにかけ、すぐに電話をした。
1コールで出た。
またそれが、何か嫌な予兆を物語っていた。