君が必要とする限り
「さっきはごめんな。今、家に着いたから。」
『いや、俺は全然良いんだ。
…なぁ、隆太。』
「なに?」
『お前、今まで、大野亜矢子に会ってたのか?』
「………。」
『会って、たんだな?』
「…うん。」
『もしかして、肉体関係…
「言うな。それ以上は、言うな。」
『…わかった。』
電話の奥で、深いため息が聞こえた。
『お前がそんな夢中になるなんて、その女もありがてぇな。』
そう言ったあと、
『隆太。今から言うことを、落ち着いて聞けよ?』
鼓動が、早まったのがわかった。携帯を握る手に、汗が滲む。