君が必要とする限り


「体調のほうは、どうですか?
痛いところとか、苦しいところはありますか?」


院長…川崎院長は、私に丁寧に質問をした。


メガネの奥にある、
優しげな瞳は、今考えれば
川崎先生、川崎隆太に似ているかもしれない。


「…大丈夫です。」


私はそう短く言って目を伏せた。

「大野さん。」


カルテを勧める手を止めて、
院長が口を開く。


「川崎先生の、カウンセリングはどうですか?」


「えっ?」


「彼は、この病院でも一番若く、あなたとも話が合うんじゃないかと思い、担当してもらっています。」


そうか。それで……


「大野さん、はっきり言います。あなたは、あなたの心臓は、どこも悪くない。
健康な、体です。」


鋭かった。
言葉も、視線も。


「こんなことを言うの、失礼も承知ですが……あなたは何か他の理由があって、ここを訪れているんじゃないですか?」


額に、嫌な汗が出る。


「…違いますか?」


乾いた唇を舐め、
額にかかった髪を耳にかけた。


「違います。」
ダメよ、妥協しちゃ。


「違います。」


確かめるように
もう一度言った。



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