君が必要とする限り
見慣れた天井。
匂い。
薄らと開けた瞳に映ったのは、
気持ちよさそうに寝息をたてる
川崎先生
ではなく、浩樹だった。
抱かれた昨日、
目を瞑り思い浮かべる先生の顔、優しい、声。
浩樹に先生を重ねた私は最低だ。
「…浩樹」
呟くと
ゆっくりと瞳を開けた。
「…おはよ。亜矢子。」
伸びをして、浩樹は上半身を起こした。
その綺麗な背中を見つめ、
重たい口を開く。
「今のマンション…もう…必要ない。」
浩樹は何も言わない。
「荷物…処分してもいいから。」
「それは、しない。」
「え?」
「荷物は、俺のマンションに送るよ。
帰る場所が、お前には必要だろ?」
振り向いて笑った。
その目は、悲しみに満ちていた。