一木くん
一木くん

スキンシップ


『スキンシップ』



今日の一木はちょっとおかしい。いつもならくつろぎリラックスタイムでもただ隣に座っているだけでくっついてきたりしない。
それなのに、今、私は、彼に抱っこを、されながら、テレビを見て、いる。
正直ちょっと恥ずかしい、というか、慣れないせいかドギマギする。いやドキドキする。
当たり前、だって、耐性がほとんど無いんだもの。

「ちょっと、一木」

「…なーに?」

得意のすまし声でなーに?なんてあっさりかわされてしまった。べたべたしてくるのは編なのに、調子だけはいつもと変わらずノリノリなんだから全くもう。

「何で私は抱っこされてるの?」

「ん…特に理由はないんだけど」

私のお腹に回されている一木の手にぎゅっと力が入った。やっぱり抱きつくなんておかしい不思議だ。

「一木、いつもならこんなことしないじゃない」

「…そう?」

またお決まりの一木らしい濁し方でさらりと私の質問をかわす。
彼の本音を聞くにはちょっと根気が必要というわけか…なんて思っていたら、今度は私の髪に顔を近づけ始めた。
わああちょっと待って、不意打ちにも程があるでしょう一木!
何度も言うが耐性の無い私の心はバックバク。

一木の唇が、私の髪にそっと触れたのがなんとなくわかって。

「一木…今私の髪にキ…キス…したでしょう」

「…駄目だった?」

「いや、駄目ではないけど…」

本当にどうして今日の一木は珍しくベタベタと甘えてくるのでしょう…あ、あれ?私今甘えって言った?あのいつも余裕をかましている一木さんが甘え?…ああでもそうか、今日の一木は私に

「もしかして、甘え…たいの?」

私がそう言うと、一木はため息をふう、と一息ついて
「あーあ、バレちゃった?」
なんて言う。





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