ポチ。
彼のことを知っている人間がいるとすれば、それはごく限られたものになるだろう。
友人。
友人の家族。
友人の友人、それもごく親しい人。
わたし。
彼の名前はポチ。
たぶん、雑種。
中型犬。
何歳かは知らない。
おじいさんだったようにも思えるし、もしかすると若かったのかもしれない。
――――いまとなっては、もはやどうでもいいことにも思える。
重要なのは、彼が確かに存在したという事実。
彼に出会ったのは、いつのことだろう。
もう、思い出せないほど昔のことだ。