ポチ。
緩いカーブ。
灼けたアスファルト。
いつもと同じ道。
緩んでいた首輪の金具が外れて、ポチは突然自由の身になった。
もちろん、わたしはひどく慌てた。
犬には帰巣本能というものがあるらしいが、それがどれほど信用できるのかが、判らなかったから。
散歩コースを走っていくポチを、わたしは追いかけた。
ミュールは驚くほど勝手が悪くて、わたしはついにミュールを脱いだ。
手に黒いミュールを持って、裸足になったわたしは、灼けたアスファルトを走った。