ポチ。


緩いカーブ。

灼けたアスファルト。

いつもと同じ道。




緩んでいた首輪の金具が外れて、ポチは突然自由の身になった。


もちろん、わたしはひどく慌てた。


犬には帰巣本能というものがあるらしいが、それがどれほど信用できるのかが、判らなかったから。



散歩コースを走っていくポチを、わたしは追いかけた。

ミュールは驚くほど勝手が悪くて、わたしはついにミュールを脱いだ。



手に黒いミュールを持って、裸足になったわたしは、灼けたアスファルトを走った。
< 6 / 15 >

この作品をシェア

pagetop