そばにいて






母につれてこられた場所は、薄暗い路地だった。





「お母さん、言っておきたいことって何?」




優奈がそう尋ねると、母は真剣な目で優奈を見た。




「あのね、優奈。
あなたに気をつけてほしいことがたくさんあるの。」




「気をつけて……ほしいコ…ト??」





「そう。
まず、歴史について知ってることは何があっても私以外、誰にも言ってはダメ。
あと、言葉も気をつけて。
ここでは通じない言葉があるからね。」





確かに、未来のことは言わないほうがいいよね。






「新撰組って名前もしばらくは使わないほうがいいわ。」




「へっ…………?」





何で??
新撰組って別に未来の言葉じゃ………




「まだ、決まってないのよ。」




お母さんは、唐突にそう言った。




「????」




「彼らの名前はまだ、“新撰組”ではなく“壬生浪士組”なのよ。」






「え、ほんと??
それは知らなかった……。」




「お母さんは最初、壬生浪士組ができる前から勇さん達といたから間違えないけど、あなたは新撰組しか知らないわよね?
だから、間違って口走らないように。」





「は、はい…ッ……。」





………え、てゆーか




「お母さんっていつからココにいるの?」






「………二年前、気がついたらここにいたの。
優奈、信じて…っ。
お母さんは、あなたをおいていくつもりなんてなかった……。
確かに、違う場所に逃げたかったけれど、その時は必ず優奈と一緒にって……ッ………」






「お母さん………。」



優奈はしばらく考えてから母に尋ねた。






「ねぇ……お母さん。
私のこと……好きだった?」








< 19 / 33 >

この作品をシェア

pagetop