そばにいて
母につれてこられた場所は、薄暗い路地だった。
「お母さん、言っておきたいことって何?」
優奈がそう尋ねると、母は真剣な目で優奈を見た。
「あのね、優奈。
あなたに気をつけてほしいことがたくさんあるの。」
「気をつけて……ほしいコ…ト??」
「そう。
まず、歴史について知ってることは何があっても私以外、誰にも言ってはダメ。
あと、言葉も気をつけて。
ここでは通じない言葉があるからね。」
確かに、未来のことは言わないほうがいいよね。
「新撰組って名前もしばらくは使わないほうがいいわ。」
「へっ…………?」
何で??
新撰組って別に未来の言葉じゃ………
「まだ、決まってないのよ。」
お母さんは、唐突にそう言った。
「????」
「彼らの名前はまだ、“新撰組”ではなく“壬生浪士組”なのよ。」
「え、ほんと??
それは知らなかった……。」
「お母さんは最初、壬生浪士組ができる前から勇さん達といたから間違えないけど、あなたは新撰組しか知らないわよね?
だから、間違って口走らないように。」
「は、はい…ッ……。」
………え、てゆーか
「お母さんっていつからココにいるの?」
「………二年前、気がついたらここにいたの。
優奈、信じて…っ。
お母さんは、あなたをおいていくつもりなんてなかった……。
確かに、違う場所に逃げたかったけれど、その時は必ず優奈と一緒にって……ッ………」
「お母さん………。」
優奈はしばらく考えてから母に尋ねた。
「ねぇ……お母さん。
私のこと……好きだった?」