そばにいて
(えっと……どっちだっけ?)
芹沢から逃げたはいいが
完全に迷ってしまった。
「……どうしよ……。」
今更ながら勝手に
部屋から出たことを後悔した。
「でも、あの男の人がさっさと来ないからだもん……。
私は…悪くなんかないもん。」
そう呟いてみるが、
誰かが来てくれるわけもない。
ただ、知らない場所で
一人ぼっちだということが
優奈を不安にさせていた。
(あー、もうなんか悲しくなってきた!)
無意識に涙がこぼれてくる。
(周りはみんな知らない人……。
ううん、知ってたってわからない。
それに、私は私自身のことでさえ………)
「あのー、大丈夫ですか?」
声の主は
可愛らしい顔立ちの青年だった。