そばにいて







「誰……?」




「あ、俺?
俺は藤堂 平助(トウドウ ヘイスケ)。
君は……見かけない顔だね。
新しい女中さん?」




「……藤堂……平…助?」





なぜだろう。

この名前、私は知ってる。




そういや、芹沢のことも知っていた。



何で?


私は何で知っているの??





私は記憶がない。

これは確かなこと。



なら、どうして名前を聞くと
知ってる気がするんだろう。






でも、この記憶は
業務上で覚えたような、
暗記したような、そんな感じ。




これは一体――――――



「ちょっと!!
質問に答えてよっ!!」



優奈の沈黙にたえられなかったようで、
藤堂はムッとして話しかけた。




「え?あ、あぁ。
私は…(何だっけ??)えと…優奈です。
女中かどうかは知りません。
てゆーかむしろ、私が何者なのか
教えてもらえませんか?」




「はい??
いや、俺は君を見たことがないんだって!
知ってたらこんなふうに聞いたりしないよ。」





うん??


ちょっと待てよ。


この人は私を知らない。 が、
私はこの人を知ってる(気がする)。



え、意味がわからない。





「あのーー……。
実はですね、私は記憶喪失でありまして――――



「優奈さん!!!!!」




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