たとえばあなたが
「俺に聞きたいことがあるって?」
警察署に面した大通りにあるファミリーレストランで、刑事は突然の呼び出しに応じてくれた。
土曜日の昼時とあって、店内は若者や家族連れで賑わって騒がしい。
「早速なんですが、この事件のこと覚えていらっしゃいますか」
崇文が1枚の紙をテーブルに置いた。
40代後半といった風貌の刑事は、体格がよく、精悍な顔つきをしていた。
「どれどれ」
刑事は紙を覗き込んだ途端にピタリと動きを止めると、顔を上げて、得体の知れない男と女を交互に見た。
「…覚えていらっしゃるんですね」
崇文の隣に座る千晶の声が、興奮を抑えきれない様子で震えていた。
「……」
刑事はコーヒーをすすって、いぶかしげに眉間に皺を寄せた。
「どんなことでもいいんです。これまでに報道されてこなかった情報、ご存知ありませんか」
千晶はすがるような目で言った。
「はぁ?」
刑事が目を丸くして、ふたりを見た。
「何でもいいんです。情報をください」
千晶と崇文は、揃って頭を下げた。