たとえばあなたが
ぐりぐりとタバコの火を消し、刑事は立ち上がった。
「キミたちが誰なのか、なんとなく察しはついた。でもなぁ、気持ちはわかるが、協力できる人間は警察にはいないよ」
「待ってください」
去ろうとする刑事を引きとめる千晶を、崇文が制した。
「…っ、でも」
崇文は黙って首を横に振った。
「…酷な話だけど、昔のことは忘れたほうがキミたちのためだと思うけどね…」
刑事は諭すように言いながら、もぞもぞとポケットからカードケースを取り出した。
「何かあったら、行動に移す前に俺に連絡してくれ。頼むから、早まって変なことすんじゃねえぞ」
刑事は念を押して、崇文に名刺を渡した。
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げる崇文の横で、千晶は俯いていた。
足早にファミレスから出ていく刑事を見送る。
言葉遣いはいいとは言い難いが、親しみやすさを感じる刑事だった。
崇文は刑事の後姿に一礼し、再び腰を下ろすと、手渡された名刺に視線を落とした。