たとえばあなたが
【警視庁刑事部捜査第二課 中西信行】
名刺の裏には手書きで携帯番号が書かれていた。
おそらくプライベートの番号だろう。
「…やっぱり警察なんかに頼っても無駄なのよ」
千晶がポツリと呟く。
「自分のクビのことばっかり心配して、遺族の気持ちなんて汲んでくれやしないもの」
崇文はそれに返事をせず、名刺の肩書きを見ていた。
「この刑事、今は捜査一課じゃないんだな」
「え?」
「ほら」
崇文が名刺を千晶に見せた。
「捜査第二課って書いてある」
「…異動になったのね」
それならば、なおさら昔の捜査資料を引っ張り出して情報提供してもらうのは難しいだろう。
「でもいいさ」
崇文は前を見据えた。
「少しずつでも、確実に近づいてるんだから」