たとえばあなたが
今日からまた、新しい一週間が始まる。
佐山萌は、すっきり晴れた朝の街を、天気とは裏腹の暗い顔で歩いていた。
(土曜日の飲み会、またうまくいかなかったなぁ)
一体、自分の何がいけないのだろう。
男ウケする髪型、洋服、香水。
どれを試しても、いつも愛想笑いで終わってしまう。
気に入った相手には軽いボディタッチも欠かさないし、目線だって送っている。
椅子に座ったときの足を組む向きだって、気を抜いたことはない。
大好きな雑誌『amam』で研究しまくっているのだから、うまくいかないはずはないのに…―
萌がため息をついたとき、高いビルが立ち並ぶオフィス街を強い風が吹き抜けた。
萌は思わず目を閉じて、肩をすくめた。
まだ冬物のコートを出すには早い。
でも、朝と夜に吹く風は、すっかり冬の気配を漂わせていた。
気付けばもう11月。
寒くもなるはずだった。