たとえばあなたが
街路樹には、昨夜までなかったイルミネーションが取り付けられていた。
早くもクリスマスを演出するつもりらしい。
いつから点灯するのだろう、と萌はワクワクした。
冬の透明な空気には鮮やかなイルミネーションがよく映える。
萌は、この季節が好きだった。
唯一不満があるとすれば、隣を歩く人がいないこと。
(今年こそは…―)
そう思った矢先、視線の先に背の高い男の姿が見えた。
「あ、小山さん」
似た格好のサラリーマンが多い通勤路でも、小山は頭ひとつ飛び出ているからすぐにわかる。
萌は小走りで小山に近づいた。
「おはようございます」
後ろから声をかけると、振り向いた小山が、
「佐山さん、おはようございます。今朝も寒いですね」
と丁寧に返した。
「小山さん、寒いのは苦手ですか?」
「わりと得意なほうですよ。どうして?」
「だって」
萌は小山の顔を覗き込んで、いたずらっぽく笑った。
「いい感じに日焼けしてるから、夏の男なのかなって」
小山は、あははと笑いながら自分の頬に手を当てた。