たとえばあなたが



萌は、せっかくふたりで外出したチャンスを何とか有意義なものにできないかと考えた。

車に乗り込むとすぐに、

「戻りましょうか。木村さんも待ってるかもしれないし」

とキーを回す小山を、慌てて引き止める。



「まだ早いし、千晶も戻ってないんじゃないかなぁ。ちょっとお茶でもして戻りません?」



会社には、午前中は外出すると言ってある。

千晶が戻っていないというのも、あながちはずれているとも思えないので、慌てて戻る必要もないだろう。



小山は車内の時計を見て、

「そうですね。じゃあ、どこかで早いランチでもしましょうか」

と頷いた。



「いいですね!私、急な外出で緊張してお腹すいちゃったし、ランチしましょう」



(わぁい、プチデートだー!)

千晶が横にいたら、ランチくらいデートでもなんでもないと一蹴されそうだが、萌にとっては貴重な一歩だった。



そんな萌の内心を知らない小山は、

「通りがかりにいいお店があったら言ってくださいね」

と、穏やかに車を発進させた。




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