たとえばあなたが



ローズヒップティーは見た目も綺麗で美容にも良く、萌のお気に入りだ。

ガラス製のポットだと赤い色が見えて、なお良い。

けれど、運ばれてきたのは白い陶器のポットで、萌は少しがっかりした。

「せっかくの赤が、もったいない」

「でも白いカップに注ぐと、綺麗じゃないですか」

小山にそう言われると、

「ほんとだ。綺麗!」

そう見えてくるから不思議なものだ。



「…小山さん、甘いのが好きなんですか?」

萌は、大きなマグカップのキャラメルマキアートを飲む小山を、じっと見た。

(なんかイメージじゃないんだよなぁ)

小山には、ブラックのコーヒーのほうが似合っていると思った。



「んー…甘い味というよりは、甘い香りが好きなんです」

「へぇ、意外ですね。ほかに好きなものって何ですか?」



好きな食べ物、好きな音楽、前の仕事、この街に来た理由…―

聞きたいことは山ほどある。



せっかくのチャンスを逃すまいと、萌は時間の許す限り、小山を質問攻めにした。




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