たとえばあなたが
午後5時。
千晶はアートフィールでのクレーム処理を終えて、会社へと戻る車中にいた。
(あいつ、ほんっとに許さん!)
礼子さえ常識を持ち合わせた人間だったら、今日の訪問は必要なかった。
途中で加わった礼子の上司が話のわかる人だったから助かったものの、なぜ私がこんな目に、と思わずにいられない。
運転中もずっと、礼子のあの独特な声が頭から離れなかった。
(…中西礼子め~)
運転中に苛立ちは禁物だ。
それでも、そんなことは言っていられないほどの憤りが心を支配していた。
しかも、初めて対面した中西礼子は、崇文が言っていたとおりの強烈な女性だった。
(…くさいっ!)
化粧顔の衝撃もさることながら、香水のキツさは千晶も体験したことがないほどの苦しさだった。
スーツにも髪にも、そして肌にも匂いが移って、それは千晶の怒りを増幅させた。