たとえばあなたが
「リアル・アリスの木村です」
『あ、もしもしぃ?』
相手の声に、聞き覚えがあった。
忘れたくても忘れられない、
(うわっ!クレーマー中西礼子!)
最悪の朝、と千晶はうんざりした。
波乱の催事は、先週なんとか終わった。
現在は注文作品の入荷待ちの時期で、連絡事項などないはずだが、何の用だろうか。
「…おはようございます」
『あのぉ、絵なんですけどぉ、いつになったら届くんです?』
礼子は、千晶の挨拶はそっちのけで、いつもよりも数段低い声で呟いた。
「え?」
礼子の発言の意味がとっさにはわからず、千晶は、
「いつ、と言いますと?」
と問い返した。