たとえばあなたが



アートフィールに行ってから今まで、今日は出されたお茶以外に何も口にしていない。

ようやく気が抜けて空腹を感じていただけに、小山の気遣いがよりうれしかった。



「そこの会議室で食べましょうか」

「はい、紅茶でいいですか?」

「ええ、お願いします」

千晶は嬉々として給湯室に向かって、紅茶を淹れた。



ところで、7時半現在の社内では数人の社員が残業に精を出しているが、その中に萌の姿がない。



千晶が使い捨てのプラカップ2つと耐熱ガラスのティーポットを持って会議室に入り、

「あの、佐山さんってもう帰りました?」

と小山に聞くと、

「ついさっき作業にキリがついたみたいですよ。そういえば、木村さんによろしくと言っていました」

と、紙袋を開けながら教えてくれた。



「そうですか」

無事に書類整理が終わったようで、千晶は安心した。




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