たとえばあなたが



「小山さん、研修が終わったら営業部の室長になるんでしたよね」

「ええ。さっきも木村さんが戻ってきたとき、ちょうどそのことで部長と話してました」

「なんだ、部長と話してたんですね。萌ちゃんが来客だって言ってたから、まだ入社したばかりの人に来客って珍しいなと思ってたんです」

「来客…?そう、佐山さん、何か勘違いしてたんですね」

小山が小さく笑った。



「…でも、そっかぁ。あとちょっとで、こんなふうに話せなくなっちゃうんですね」

今日はいろいろありすぎて、つい感傷的になってしまう。

千晶は、小山の前だとなぜか気負うことなく自然な自分でいられた。

それに今日の萌のメールの内容も手伝って、妙に意識してしまう。



だから、

「そんなことないですよ。研修が終わってからも、まだまだ木村さんに教わることは山ほどありますから」

という小山の言葉が、うれしかった。





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