たとえばあなたが
もし萌の言う通り、小山が自分のことを気に入ってくれているとしたら。
出会って2週間足らずで、それは勘繰りすぎだと千晶もわかっている。
自分にそんな妄想をしているヒマなどないことも。
けれどたまにこういうことを考えるもの、気晴らしになっていい。
そんなことを思いながら、千晶がベーグルにかぶりつくと同時に、
「ところで、アートフィールの件は何だったんですか」
と小山が話をふった。
「あ…えっと、先週終わった催事の件でちょっと。担当の中西さんって方が少し変わってて、何度説明してもダメなんです」
「中西さん?」
「ええ、中西礼子さんっていう女性です」
「中西…礼子…?」
小山が少し目を見開いたのを見て、千晶は首をかしげた。
知り合いだろうか。
小山の転職前の仕事は知らないが、同じ業界で働いていたとしたら、接点があってもおかしくはない。
「ご存知なんですか?」
「あ、いや…知らないけど。ちなみに、どんな人?」
「すごい奇抜な人です。外見も中身も」
千晶は小山に、今回の出来事を順を追って話した。