たとえばあなたが



「めちゃくちゃな話だな、それは」

小山が眉を寄せ、千晶は黙って頷いた。

「こんなこと、もう二度とごめんです」

口に運んだ紅茶は、もうすっかり冷めていた。



少しの間沈黙が続き、狭い会議室には空調の音だけが響いていた。



やがて考え込んでいた小山が、

「そうだね、もうやめよう」

とポツリと言った。



「え?」

「そんな会社との取引は、もうやめましょう」

「そんなこと簡単に言っていいんですか?」

「来週、僕が室長になったら、最初にそれを実行するよ。マニフェストだ」

「マニフェスト?」

「ああ、マニフェスト」

小山がにっこり笑うのを見て、千晶もつられて頬を緩めた。

すると小山は、今だとばかりに身を乗り出した。



「じゃあ、散々だった木村さんに、何か気分転換になることをしてあげたいな」



「え…何ですか急に」

思いがけない言葉に戸惑う千晶に、小山はさらに続けた。



「今度の日曜日、僕と映画に行ってくれませんか?」








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