たとえばあなたが
小山は、真っ白なバスタオルを頭からかぶってキッチンに戻り、沸かしておいたポットの湯でコーヒーを淹れた。
そして、マグカップいっぱいに注がれた香ばしいコーヒーに、コンデンスミルクをたっぷり加える。
スプーンで混ぜると、黒いコーヒーが柔らかい褐色に変わっていった。
昨夜のうちに用意しておいた野菜サラダを冷蔵庫から取り出して、リビングへ向かった。
ベランダに面した大きな窓から朝陽が差し込んで、白を基調とした家具がいつもより眩しく映えている。
その光に目を細めながら、ソファに体を沈めて、甘いコーヒーを一口すすった。
部屋に満たされた香ばしくも甘い香りが、精神をリラックスさせる。
そして緑が鮮やかなサラダは、朝の体に瑞々しい潤いを与えてくれた。
小山の目に映るすべて、そして体を包むすべてが、明るい喜びに満ちている。
唐突なデートの申し込みに、千晶はとても驚いた様子だった。
それでも受け入れたということは、悪いイメージは持たれていないということだ。
(…大丈夫。きっとうまくいく…)
そう思ったとき、何に対する『大丈夫』なのかがわからず、小山は自嘲気味に笑った。