たとえばあなたが
チケット売り場に辿り着いたときには、観たい映画のチケットが完売間近になっていた。
カウンター上の電光掲示板の△マークを見て、
「チケット、危ないですね」
と千晶が心配そうに言った。
「駐車場が思ったよりも混んでいたからね」
ずいぶん早めに待ち合わせたつもりだったのに、結局はこの始末。
これだから都会はいやだ、と小山はため息をついた。
チケットを求める人々の列に並んで、何気なく千晶の後ろ姿を眺めてみる。
千晶の身長は、高くもないが低くもない。
自分の身長から考えて、160センチといったところだろうか。
まっすぐの黒髪が腰のあたりまで伸び、それはとても艶やかで、目鼻立ちのはっきりした千晶によく似合っていた。
思わず触れてみたい衝動に駆られて、手を上げかけたとき、
「あ、そうだ!」
と千晶が突然振り向いた。