たとえばあなたが
省吾は怖気づいて、何も言い返せないまま体を硬直させて立っている。
それを見かねた崇文が、
「焦るなよ」
と、口を挟んで千晶をたしなめた。
「省吾を犯罪者にするのが、俺たちの目的じゃないだろう」
「そうだけど、他に手がないのよ」
千晶がガタンと派手な音を立てて椅子に座った。
足を組んで、指先で黒光りするテーブルをコツコツと叩く。
静寂の中、その小さな音だけが時の流れを知らせていた。
やがて省吾が、あの…、と口を開いた。
「あの…自分、中西のこと教えてくれたサツのケータイ知ってるんで聞いてみましょうか…」
「……!」
「…そういうことは、早く言え!」
崇文が省吾の頭に拳を振り下ろした。
静かな部屋に、ゴツン、という鈍い音と、
「いってぇ~!」
という省吾の悲鳴が響き、その傍らでは千晶が頭を抱えてため息をついていた。