たとえばあなたが
12月23日、午後2時。
崇文は、松越百貨店の社員食堂で遅いランチをとっていた。
世間はすっかりクリスマスモードで、百貨店では年末商戦の真っ只中だ。
店内に流れるクリスマスソングを聴くと、体が自然に、この時期特有の慌しさを思い出す。
とはいえ、お歳暮がひと段落した今、クリスマスケーキを求めに来る客が大半の百貨店では、大きなトラブルは少ない。
忙しいことには変わりないが、崇文は、いつかの北海道展よりはラクな気持ちで臨んでいた。
(あと1週間で、今年も終わりか…)
早いものだとつくづく思う。
相変わらずの、何の変哲もない日々。
それこそが本当の幸せなのよ、と母は言うけれど…―
(そのわりに実家に行くと、嫁はまだかーってうるせーんだよなぁ…)
今年は帰るのやめようかなと思いながら、きつねうどんをすすったとき、テーブルに置かれた携帯が震えた。