たとえばあなたが
いろんな角度から鏡を見て、確認する。
(よしよし、できたな)
まだ前髪は濡れているが、萌と会う頃には乾くだろう。
待ち合わせまで、あと30分。
多少のトラブルはあったが、ギリギリ予定通りだ。
あとは、ちょっとしたプレゼントを買って、約束の場所へ向かえばいい。
崇文は、表参道と聞いたときから決めていた、1階にあるチョコレート店へ向かった。
狭い店内に、甘い香りのチョコレートや色とりどりのマカロンが並んでいる。
中でも、壁際の棚に盛ってあるマロングラッセの大きさに目を奪われた。
ツヤツヤしていて、形も揃っている。
(これ、絶対うまいな)
視線を下にずらし価格を確認すると、なるほど納得の高価格だった。
でも残念ながら、今日のお目当てはマカロンだ。
以前に3人で食事をしたときに、萌と千晶がここのマカロンの話で盛り上がっていた。
崇文はそのテンションについていけず退屈な思いをしたが、それが今になって役に立つとは。
黙って聞いていた甲斐があったというものだ。