たとえばあなたが
振り向くと、萌がニコニコして立っていた。
「お待たせ~」
ラビットファーが揺れる薄いピンクのコートに、柔らかそうな革のブーツ。
「俺も今来たとこだよ」
「そう?良かった」
キャラメル色のブーツが髪の色と合っていて、まるで萌のために作ったかのように似合っている。
あまりのかわいさに、崇文は自然にニヤけてしまう口元を手で押さえた。
「どうしたの?」
「何でもないよ。どこ行こうか」
時間がなくて、店のリサーチまではできなかった。
知ったかぶりも格好悪いと思った崇文が、
「ごめんよ、俺あんまり店とか知らなくてさ」
と言うと、萌は、
「だろうと思った。いいの。正直に言ってくれる人って好きよ」
と笑った。
「えっ…す…」
「大丈夫、私のお気に入りの店に行こう」
(好きって…萌ちゃん…)
崇文の動揺など気にも留めず、萌はやさしく微笑んで崇文の腕を取る。
崇文は、冷たい風に吹かれながらも熱を帯びた頬を感じながら、萌と並んでクリスマス一色の表参道を歩いた。