たとえばあなたが
萌が入った店は、表参道の駅からすぐのレストランだった。
外に面した窓は大きく、きっと昼間は自然光で明るいのだろう。
店内はヨーロッパを感じさせる家庭的な雰囲気で、居心地が良さそうだった。
「何料理の店なの?」
「えーと、カジュアルフレンチっていうか、イタリアンとか…あ、でも、パエリアもおいしいよ」
「……」
大きく言えば、洋食。
イメージ通りのヨーロッパらしいメニューが揃っていて、崇文の腹の虫が活発になった。
注文を済ませても、萌はまだ下を向いてメニューを見ている。
(今のうちかな)
崇文は、隣の椅子に置いた紙袋を手に取った。
「萌ちゃん、これ」
顔を上げた萌に差し出すと、萌は首をかしげて受け取った。
「さっき買ったんだ。メリークリスマス」
萌は驚いたようだったが、すぐに笑顔を見せた。
「うれしい。ありがと」