たとえばあなたが



萌がかわいいことは、知っていた。

でも今日はいつもの萌とは何だか違うな、と崇文は思った。



目が潤んでいて、全体的に憂いを帯びた雰囲気。

守ってあげたくなるような弱々しい表情が男心をくすぐる。



そもそも、こうして突然呼び出してくること自体がいつもと違うのだ。

どうしたというのだろう。



「チョコレート?」

萌が、箱と崇文を交互に見ていた。

「いや、マカロンなんだ。好きでしょ」

わぁ、と萌がにっこり笑った。



(ああ、これこれ…―)

やっぱり、萌にはこの顔だ。

憂えた表情なんて似合わない。



「開けていい?」

目の前におもちゃをぶら下げられた子犬のような上目遣いで見つめられ、崇文の頬が思わず緩んだ。

「もちろん」




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