たとえばあなたが



萌が箱をそっと開けると、色とりどりのマカロンが顔を出した。

「わぁ、かわいいー」

萌がひとつつまんで、うれしそうに崇文に見せた。



たったこれだけのことでこんな顔を見せる萌は、とても愛らしかった。

さっきまでの憂い顔はどこへやら、だ。



「萌ちゃんって、よく『かわいい』って言うよね」

萌は、まだ料理が運ばれて来ないのを確認すると、ピンクのマカロンをひとくちかじった。

「そう?女の子なら誰でも言うんじゃない?ふふ、甘~い」

「そうかなぁ」

崇文は頬杖をつきながら、カラフルなマカロンの箱を手にとって眺めた。



(…少なくとも、千晶はこんなにかわいく言わねーな…)



そんなことを考えていると、視線を感じた。

ふと前を見ると、萌がいたずらっ子の目をして崇文を見ている。



「な、何?」

「今、千晶のこと考えてたでしょ?」

崇文は、思わずドキッとした。





< 199 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop