たとえばあなたが
萌が箱をそっと開けると、色とりどりのマカロンが顔を出した。
「わぁ、かわいいー」
萌がひとつつまんで、うれしそうに崇文に見せた。
たったこれだけのことでこんな顔を見せる萌は、とても愛らしかった。
さっきまでの憂い顔はどこへやら、だ。
「萌ちゃんって、よく『かわいい』って言うよね」
萌は、まだ料理が運ばれて来ないのを確認すると、ピンクのマカロンをひとくちかじった。
「そう?女の子なら誰でも言うんじゃない?ふふ、甘~い」
「そうかなぁ」
崇文は頬杖をつきながら、カラフルなマカロンの箱を手にとって眺めた。
(…少なくとも、千晶はこんなにかわいく言わねーな…)
そんなことを考えていると、視線を感じた。
ふと前を見ると、萌がいたずらっ子の目をして崇文を見ている。
「な、何?」
「今、千晶のこと考えてたでしょ?」
崇文は、思わずドキッとした。