たとえばあなたが
崇文と萌が表参道で待ち合わせていた、ちょうどその頃。
千晶は、少し早いクリスマスディナーに舌鼓を打っていた。
小山が予約してくれたレストランは、シェフが目の前で調理するスタイルの、高級鉄板焼き店だった。
肉や海鮮が焼ける音が、高級感漂う雰囲気の中で、居心地の良さを提供してくれている。
黒を基調とした内装、薄暗い照明に浮かび上がるクリスマスツリー、そして着飾った客たち。
目に映るどれもが、大人にしか味わえない華やかなムードを醸し出していた。
「雰囲気に酔いそう」
と言う千晶を、小山は余裕の表情で笑った。
前菜が運ばれ、その雰囲気にも慣れた頃、ようやく会話も弾むようになった。
「第一印象で小山さんのことを気に入ってたのは、萌ちゃんなのよ」
千晶はグラスを傾け、正面の小山を見た。
「何だよ、突然」
「だからね、私たちがこんな風になるなんて思わなかったなぁってこと」