たとえばあなたが
この中に、さすがに萌とふたりで入る勇気はない。
彼と一緒で良かった、と千晶は安堵の息をついた。
「丘に上がってみましょうよ」
千晶は、小山の手を取って小さな丘をのぼった。
丘の上にあるいくつかのベンチは、どれもカップルでいっぱいだった。
これだけの人混みでも、どうやら知っている顔はなさそうだ。
「ま、いたとしても自分たちの世界に入り込んじゃって、俺たちなんかに気づかないかもな」
「ふふ、そうね」
気兼ねなく手をつないだまま、イルミネーションが見渡せる場所に寄り添って立つと、冬の風が正面から吹いた。
「寒ーい!…けどキレーイ!」
一面の花畑のように目の前に広がった景色に、目を奪われた。
赤、緑、白…―
去年あたりからLEDライトが増え始めて、公園はより一層明るく彩られている。
小山も、
「これは聞きしに勝る迫力だな」
と、目を丸くして見入っていた。