たとえばあなたが
クリスマスに、好きな相手とおいしい料理を食べる幸せ。
ふたり並んで、光り輝くイルミネーションを見る幸せ。
(私には無縁だと決め付けていたけど…うれしい)
同僚たちの間で、この時期になると必ず話題にあがるクリスマスの過ごし方。
千晶はそれを、いつも笑顔で聞くだけだった。
いつもいつも、笑顔の裏に、羨ましく思いながらも諦めている自分がいた。
(来年も、その先も、こうして一緒にいたい…)
やっと手に入れた、幸福。
長くは続かないかもしれないとわかっていても、今はそう願わずにはいられない。
今だけは…―
この幸せを噛みしめていたい。
(いつまでも、このままで…)
この思いを崇文が聞いたら、何と言うだろう。
馬鹿なことを、と鼻で笑うだろうか。
(馬鹿げてることくらい、私だってわかってる…)
だからこそ、幸せであればあるほど、ぎゅうっと胸が締め付けられた。