たとえばあなたが
「何がわかったんだ」
興奮気味の省吾に流されないよう、崇文は出来るだけ冷静に話した。
『中西の家族です。妹がいますよ!東京に住んでます!』
「妹?」
それだけか、と崇文が眉をひそめると、省吾もその気配を感じたのか、
『あ、いや。しかも、けっこう近くにいるかもしれなくて…』
と慌てて付け足した。
「…名前は?」
『えーっと、名前は…』
―…次の瞬間、崇文は耳を疑った。
省吾が口にしたのは、聞き覚えのある、しかももう二度と関わりたくないと思っていた名前だった。
「…中西礼子?!」
崇文が思わずその名前を叫ぶと、千晶は手にしたマグカップをあやうく落としそうになった。