たとえばあなたが



年が明けて間もない1月8日、金曜日。

千晶は萌とふたりで、会議室にこもって大量の資料整理に追われていた。



「…なんで年末に終わらせなかったのよー」

「だって忙しくて手が回らなかったんだもん」

契約書や報告書をファイリングするだけの作業。

単純に思えて、地域ごと、日付順、担当者別に分けたりと、手間がかかる。

萌が年明けまで持ち越してしまったので、千晶も手伝わされるはめになった。



(寒い中、営業に出るよりはいいけど。それに…―)

萌に、謝りたいことがある。

タイミングを見計らっていたところに舞い込んだ資料整理のおかげで、ふたりきりの時間ができて助かったと千晶は思った。



「ねえ萌ちゃん」

「ん~?」

萌はファイリングの手を休めることなく、声だけを千晶に返した。

「…心配してくれて、ありがとう」

「ん?」

萌が顔を上げた。

「タカちゃんに聞いたの。心配してくれてるって」

「ああ…あれね」




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