たとえばあなたが



しばらく書類整理に没頭していると、ノックの音に続いて、

「お疲れさま」

と、小山が入って来た。



「木村さん、携帯のバイブがひっきりなしだよ」

「わわ、すいません。サイレントにするの忘れてました」

小山は、千晶の携帯バイブが響いて迷惑になっているのを知らせに来てくれたようだった。



慌てて席に戻った千晶は、隣の席の男性社員に、

「すいません。うるさかったでしょ」

と声をかけて、引き出しを開けた。



携帯を見ると、着信が10件も残っている。

履歴は、すべて崇文からのものだった。

「…!」

千晶の心臓が、大きくドクンと鳴った。



室長の小山に許可をもらって、電話をかけ直すために廊下へ出る。



…プップップッ…



接続音がもどかしい。

一体、何があったのか。

千晶は心臓の鼓動が速まるのを感じながら、携帯を握り締めた、




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