たとえばあなたが
こんな最期は、ひどすぎる。
和子は、いつも千晶のことを愛してくれた。
家族を亡くしてからの千晶にとって、和子は母であり、何でも話せる友人だった。
『おばさんが年とって動けなくなったら、私がお店をやって、おばさんの面倒も見るわ』
何度となく言った言葉。
その約束を果たすことも、
『ありがとう』
と照れくさそうに笑う和子の姿を見ることも、もうできない。
一緒に参列していた萌が、千晶の肩をしっかり抱いていた。
その力強さだけが、今の千晶を支えていた。
和子の棺を乗せた霊柩車が、出発を告げる長いクラクションを鳴らした。
ここぞとばかりにシャッターを切る、マスコミが目障りだった。
参列者が一同に手を合わせる中、千晶は、
「…おばさん…!」
車にすがりつきたい気持ちで、ただただ泣いた。
くずれ落ちる千晶の横で、崇文は拳を握り締め、火葬場へ向かう霊柩車を見ていた。