たとえばあなたが
翌日、千晶は小山のすすめもあり仕事を休んだ。
家にいると余計に気が滅入る。
だからといって出勤しようにも、心身ともに疲れ切っていて、体が言うことを聞いてくれそうもなかった。
千晶は、目覚めてからずっと、ソファで膝を抱えていた。
物音ひとつしない部屋は、時が止まってしまったかのようだった。
ローテーブルに置かれている一輪挿しの、名前も知らない赤い花が千晶を見ている。
千晶も無心で、それを見つめた。
動きたくない。
考えたくない。
もう、何もしたくない。
赤い花は、そんな千晶をまっすぐに見ていた。